やまざきクリニックからのお知らせ

今日の医療を思う

西洋医学は、とてつもないスピードで日進月歩しており、それがもたらした恩恵ははかり知れないものがあります。

その一方で置き忘れてしまったことが多々あることも事実であり、その影響が現在の医療の歪みを生みだしてしまっていることがあることも、これまた真実であります。西洋医学が遺伝子にまで踏み込み、深く狭くなるにしたがって、病気だけをみて病人を診ない医師が益々増える傾向にあります。CTやMRIなどの検査でからだが更に細かくわかるにしたがって、診断を検査に頼る傾向が多く、検査第一主義でそれに引っかからない人には、症状があっても病気とみなさず軽視する傾向が多いのです。それでは、西洋医学で見放された人はどうしたらよいのでしょうか?医療はなぜこのような憂うべき状況になってしまったのでしょうか?

これらの事に対して私はこう思います。


そもそも健康とは検査で異常が無いことではなく、精神・身体・環境がほどよく調和し、与えられている条件において最高QOLを得ている状態だと考えます。症状があっても検査で異常がないから=健康では決して無いのです。西洋医学の診断は局部的であり、治療は対処的、抑制的であることが多く、いうならば攻める医学であります。

得意分野は、急性期疾患(脳卒中や心筋梗塞、緊急手術を必要とする病気などの致死的疾患)や感染症(肺炎、腎炎など)や緊急の処置を要する病気、高血圧や糖尿病などの生活習慣病であり、これらには西洋医学が絶大な効力を発揮します。人間は精密なパーツから成り立っているから、どの部分に異常があるかを調べ上げ、悪いところが分かったらそこを治す、というのが西洋医学であります。

しかしながら、症状が有っても、いろいろな検査をしても異常が無い場合には、病気とはみなされず、ほとんど一律に自律神経失調や神経症、年のせいにされ、治療の対象外にされてしまう。なぜであろうか?それは“心身一如”という心とからだは不可分な存在であるという思想が抜けてしまっているからです。科学ですべて解明できるほど人体は単純にできていません。自然科学はまだまだ未知な部分がたくさんあります。

それに、このような場合には、西洋医学では治す薬も術もないから、お手上げで、そのようにせざるを得ないのです。おまけに、検査第一主義なので、西洋医学だけしか知らない医師は、ひどい者になると、患者さんを“見ようとしない”“触れようとしない”“訴えを詳しく聞こうとしない”いうことがあり、そのような悪評はよく聞くところであります。 “傾聴する”から始まり、“触れる”ということで更にそれが深められるということは、何も医療に限らず、コミュニケーションの基本であると思います。その最も大事な事が欠落している医療者が増えてきているということは、何とも嘆かわしいことであります。患者さまに安心や信頼感を与えるいうことは、治療の一部であるのです。

治療面では、人間の持つ自然治癒力やその人の持つ体質などには全く目が向けておらず、同じ病気や症状であれば、体質や個体差には関係なく、基本的に同じ治療が施されます。人間は元来治ろうとするチカラ、すなわち自然治癒力を持っていますが、それにはお構い無しなのです。体力がある人は、強い薬で自然治癒力を多少抑えられても、症状を薬が抑えてくれている間に、治癒力に余力があるので、それを使ってその間に病気を治すことができる。しかし、体力が無いひとではどうであろうか?自然治癒力を完全に奪われ、症状が治まるどころか、その副作用に苦しむことになる。最大の被害が「抗がん剤によって、がんは小さくなったが、その副作用で患者さんは亡くなった」である。また、薬を使わなくとも治っても、それは“たまたま”とか、云われ、挙句の果てには“プラセボ(偽薬)効果”といわれ、蔑まされる傾向にあることは、いかがなものかと思う。それこそが、人間の持つ素晴らしい自然治癒力であるのに…。

プラセボ薬も立派な薬なのである。しかしながら、こういう分野が東洋医学は大得意なのである。東洋医学は、それこそまさしく反対で、“よく見て”“よく聞いて”“よく質問して”“よく触って”と、何かの車のCM でありませんが“来て、見て、触って”です。人間の五感を駆使して、その患者さんのからだの中でおこっていることを探るわけです。東洋医学では、人間は全てにおいて中庸が保たれていれば、健康でいられるという思想があるため、どこが中庸に保たれていないのかをあらゆる面から探るわけです。したがって、診察をうけたところでその癒し効果で既に自然治癒力が向上しているのであります。つまり診察は治療の始まりなのであります。

西洋医学しか知らない医師でも、名医にかかると、「先生に話を聞いてもらっただけで、診察してもらっただけで、良くなった気がする」といわれたり、本当に良くなってしまうということがあります。東洋医学の診断はそれを地でいくのです。そして、その東洋医学的診断を元に、お薬はその人にあった薬を使う。つまり、同じ症状であっても、その人によって使う薬は全く違います。本当の意味でのオーダーメイド治療であります。

ですから、私は、診察は東洋医学的テイストを取り入れたスタイルで行い、検査機器は西洋医学の恩恵を最大限受けるべく最先端のものを惜しみなく使用して、診断がついたら治療は、西洋医学でいくか東洋医学にするかは、その得意・不得意分野を勘案して選んで行います。こんなステキな双補的な医学を融合させない手はないと、いつも痛感しております。こういう医療のスタイルが、もっと日本でも取り入れられれば、患者さまの医療に対する満足度や信頼度も上がるだろうし、西洋医学からは見放された医療難民は少なくなるでしょうし、医療に対する不信感ももっと少なくなるような気がします。

こいいう日が早く来ることを願って止みません。

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